小野寺時夫「人は死ぬとき何を後悔するのか」

医療

新型コロナウイルスの流行で、以前よりも死を身近に感じるようになり、万が一の時に後悔せず人生を終えるにはどうすれば良いか参考にしたいと思い、本書を読みました。

著者の小野寺時夫さんは、ホスピス医として2500人以上を看取ってきました。その経験から、どうすれば死に際に後悔の少ない人生を送れるのかを説いています。

本書を読んで気付いたこと

日本人独特の生命に対する向き合い方

日本人は欧米人に比べて、真剣に「死」に向き合うことを避けたがる傾向があると感じました。

欧米人は癌など生命にかかわる疾患にかかったら、「手術して治る可能性」「再発可能性」「再発するならどの程度生きられるか」など、徹底的に医師に質問・相談しますが、日本人の場合、医師が患者に病状について詳しく説明することも、患者が医師に説明を求めることもあまりありません。生命に関する重大な情報に対して曖昧でいるのは、日本人独特の国民性のようです。

また、欧米人は魂の無くなった肉体を尊重しませんが、日本人は肉体を尊重するあまり、意識の無くなった人でも経管栄養など苦痛を伴う延命治療でしつこく生かし続ける事が多いようです。

苦しみながら怖い顔で亡くなる人の特徴

穏やかな死に顔で人生を終えられたら理想的ですが、実際は苦しみながら亡くなり、死に顔が非常に怖い人は結構いるようです。また、お金・権力・名誉のある人の方が死に対する不安・怒り・落ち込みが激しいそうで、お金も権力も名誉も持ち合わせていない私は少し安心しました。不謹慎ですが。

怖い死に顔になる人には次のような傾向があります。

  • 身体的苦痛が長く続いた人
  • 手術や抗がん剤治療を受けすぎた人
  • 最後まで死に抵抗する人(40~50代の患者に多い)
  • 人生に不運・不満の多かった人
  • 遺族のことが心配でならない人

人間は死に直面すると、地位や名誉といった社会的な衣が外され、むき出しの個人になります。人間の致死率が100%である以上、地位や名誉やお金に拘らなくても大きな不運や後悔が無ければ御の字ではないかと思います。

人は生きてきたようにしか死なない

わがままな人やお金に汚い人は、死の直前までわがままでお金に汚いものです。つまり人間の性格・人格はなかなか変わらないものなので、ある程度年齢を重ねたら自分の性格についてくよくよ悩むことは無意味なことなのです。

私は口数が少ないせいか、「陰気に見える」と言われることが多く、これまで悩んできましたが、人の性格や雰囲気は簡単に変えられないので、陰気に見える自分を肯定し自分なりに生きていこうと思いました。

安らかに死ぬには

本書では様々な患者の「死に際」を取り上げることにより、安らかに死ぬにはいかに生きるかが重要だと説いています。

夢は定年後に持ち越さない

まず大前提として、人は常に死にまとわりつかれて生きているのであって、死とは生の延長線上の遠くにあるものではないことを意識するべきです。そう考えると自ずと「やりたいことを先延ばしするべきではない」と思えてきました。夢中になれる趣味や仕事を持ち、何かに没頭して楽しめる人こそが真の幸せな人ではないかと思います。

最近、老後の貯金は数千万円必要だなど、不安を煽る意見が散見されますが、老後のために節制ばかりするのではなく、我慢はほどほどにして楽しく生きるのが理想的です。

お金と色情は人生を壊すので注意が必要

お金に関して言えば、遺産相続で揉める事ほど悲惨なものはないと著者は記しています。学識、社会的地位、経済的豊かさなど一切関係なく、皆醜い人間に変身してしまうとの事です。何不自由なく贅沢に暮らし、財産の豊富な人間が必ずしも幸せとは限りません。いっその事、遺産など無い方が良いのではと思いました。私には大した財産はありませんが、なるべく生きている間に有り金は全部使い、余った分は良識のある慈善団体に寄付するつもりです。

また、イケメンの夫に浮気を繰り返され怖い死に顔で亡くなった女性や、激しい夫婦喧嘩をし妻に怒鳴られながら亡くなった男性もいるそうで、色情で揉めると悲惨な死に方をするのだと戒めになりました。

まとめ

本書では様々な患者さんの死に際の姿が紹介されていますが、より良く死ぬためにはより良く生きること、これに尽きると思います。全く後悔の無い人生を送れる人は稀でしょうが、できる限り悔いを残さず、身の回りも整理して「立つ鳥跡を濁さず」死ねたら理想的なのではないでしょうか。

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